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写真集『THEE MICHELLE GUN ELEPHANT LAST HEAVEN —LAST HEAVEN—』の
まえがきにかえて


どんな旅にでも、その時には気がつかなくても、ずっと後になってそれと知るようなことがある。
この冬ひさしぶりに暗室に長く籠りながら改めてそんなことを強く感じた。
6つ切をカラーとモノクロ合わせて400枚ほど、現像機は使わずに文字通り"手"で焼き付けた。
作業は驚くほど集中して進めることが出来た。撮影から時間も経っているし、
冷静に写真を仕上げようとする目が確かにあった。
それでも時折、液から浮かび上がる像に素朴に驚く自分がいた。

2003年、ミッシェルの解散が発表されて2.3日たった時、
「ラストツアーの撮影をしてほしい」という電話があった。
ライブを撮ったことなどなければ、そんな装備も持ち合わせていなかったけれど、
憧れのミッシェルと長い時間を過ごせるならと、あまり考えずに引き受けてしまった。
それから1ヶ月の旅の末、ラストツアーの写真集は完成した。
この『LAST HEAVEN』の出来栄えには今でも本当に満足している。
それでも当時装丁に対するお叱りのようなものは僕に対してもずいぶん向けられた。
格好いいのだからいいじゃないかとは言い切れない重みのようなものも少なからず感じるようになった。
数年経って『LAST HEAVEN』が売り切れた事を聞いた頃から今回の本に関する事を考え始めた。
何人かの人に相談しても誰もが難しいと口を揃えた。
それからしばらく忘れていた時期もあったのだけれど、
幾つかの問題をクリアし、版元を変え、実現に漕ぎ着けることができた。
気が付けば2015年になっていた。

本を作り直すにあたって装丁は大きく変えた。これだけのボリュームの写真集を、
決して多くはない部数でも、最高のクオリティを求めて作りたかった。当然価格も高くなる。
ただ、経験的に言って、少々値が張っても
力一杯作った方が長い目で見れば喜ばれるんじゃないかと僕は考えている。
本を収納するケースの絵柄は2種類になった。
どちらも捨てがたく、コストはかかるが両方作りたいとスタッフ全員が言った。
どちらにするか、悩む事もまた楽しんでもらえると我々としても嬉しい。

「一万年たっても、この世界にロックがあってほしい」
これは何年か前に、確か京都の居酒屋で能野哲彦さんの言った言葉だったと記憶している。
"確か"というのはその時は皆相当酔っていたし、その場にあった気分が誰かの口を衝いたようにも聞こえたからだ。
あの時、ロックという言葉は何を指していたのか? 自由な感じだったり、闘いのようなものだったり、
あるいは純粋に音楽の一つの様式だったり、きっと様々な想いが含まれていたのだろう。
いずれにせよロックという言葉はその場を少しだけ、そして漠然と熱くしてくれる。
何かに賭けてみようじゃないかとほんの一瞬でも思わせてくれる。

一万年たっても、この世界にロックはあるだろうか?
もちろんそんなことは誰にもわからない。でもあったらいいよな、と僕は想像する。
そして写真集という形で僕も賭けてみたいと思う。

なんだか途方もないことだけれど。


2015年 4月

澁谷征司


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 本書所収の写真は、写真家 澁谷征司が2003年に惜しまれつつも解散したロックバンド THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのラストツアー全行程に密着し撮影したものです。そこで撮影された写真から写真集『LAST HEAVEN』(2003年 rockin'on刊)が刊行されましたが、本書は改めてプリントを焼き、まったく新たに写真をセレクトし、多数の未発表作も含めて構成した全400ページの決定版です。
 各地で繰り広げられたステージ上での圧倒的なパフォーマンスや、オーディエンスとの交歓の様子に加え、楽屋内や移動中など様々な場面でメンバーの表情に肉迫しています。ほとばしるような臨場感とスピード感のある構成は、彼らと共にツアーを駆け抜けているような感覚を読者に呼び起こします。
 今なお色褪せることのないTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの音楽と共に生きるすべてのリスナーに、また、解散後に彼らの音楽と出会った若いリスナーに、音の無い写真の世界で生き続ける彼らの姿をぜひ目撃していただきたいと思います。


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